善と鱗

のんびり静かに暮らそう

今更な映画JOKER考察【ネタバレ注意】

今回の考察で私が推したい結論は

全てがアーサーの妄想であった

という説です。

 

この物語ではアーサーという貧しい男がゴッサムという最低な街で

虐げられ 職を失い 裏切られ 初めて人を殺し

そしてジョーカーになるまでを綴っているのですが

私が初めて見た時はただ

ああ、ブルースの両親を殺すところまでしっかりと回収してくれた良かった

としか思っていなかったのですが

このアーサーの妄想だったという説を使うと

彼の最後のシーンまでしっかりと合点が行くのです。

 

まず最後のシーンから振り返ると楽なのですが、

大前提として彼はあのアーカムにずっといました。

そして冒頭のカウンセリングの時に

彼が病院に収容されているシーンがあったので

これは彼がもしここから出られたらという妄想であると取れます。

 

また妄想の中での彼もまた妄想癖があり、また思い込みが激しく、

怒ると手が付けられないなどの性質を持っています。

 

彼は最後のシーンでジョークを思いついたんだ、と言い、

またカウンセラーには理解できないさ、と話しています。

この現実世界でのアーサーは自分や周りを理解している、

もしくは深く拒絶しているように見えます。

そして彼には自分の妄想の中では求められ、

犯罪界の道化王子の名に恥じない装い、態度でしたが、

現実の彼は病院内で楽しそうに最後に走り回っています。

この様子からバットマンという存在自体が、

ジョーカーという異常者の中で作られた実態のないものである

という可能性が高いと思われるわけです。

バットマンの存在全ての大前提を壊す「JOKER」に大変驚きました。

 

 〜内容考察〜

私はもしかすると今回の映画JOKERで彼の設定が統一

(もしくは全てを踏まえた解決案的絶対な設定がもたら)

されるのではと期待していました。

しかし映画ジョーカーはアニメや映画のバットマンのジョーカーとして観るのでは

抱えきれないくらいの社会問題の提示やメッセージ性がありました。

 

ホアキン・フェニックスの演じるジョーカーことアーサー・フレックは

貧しい家庭に生まれ、また生まれながらに脳に障害を持っていました。

それが突然「笑う」ということ。

しかしフランセス・コンロイの演じる彼の母親ペニー・フレックは

彼の笑顔が人々を楽しませる、と彼を励ましていました。

ここですでに驚いたことがあるんです。

そう!今作ではジョーカーの本名として

アーサー・フレックという名前が与えられています。

今までは名前は不明、もしくはマフィア時代の呼び名のジャック、

としか表されていなかったので(ジョーカーにスポットを当てているのだから

当たり前だと言われるとそこまでなのですが)びっくりしました。

急にジョーカーが人間味を帯びてきました、名前ってすごい。

また彼には夢があります。

それはコメディアンになること。

好きなテレビ番組はロバート・デ・ニーロ演じるマレー・フランクリンが

司会者を務める「マレー・フランクリン・ショー」

そこに登場する妄想なんかもして!

(オタクのトリップ願望と似ているかもしれませんね。)

夢を叶えたい青少年にはよくある感情でしょう。

ただ原作ではもちろん、今作でもジョーカーの年齢について触れられませんでしたが

ホアキン・フェニックスが44歳なのでその辺で考えるとちょっと痛いかも…?

アメリカでは普通なのかもしれませんが(知りません)

日本では多くの人に現実を見ろって言われるでしょう…

さて、そんなアーサーの生計を立てるための生業は道化師です。

レンタルピエロといったところでしょうか。

ある程度需要があったようです。

ただ当時のゴッサムは社会全体を見て仕事自体が少なくかなりの不景気で

貧富の差も激しく、街はゴミだらけ、観光客は来ずまた不況…の悪循環。

生活はかなり苦しくアーサーは母親に食べさせるため食事を抜いたりで痩せ体型。

そんなゴッサムを変える、と市長選に立候補していたのが

バットマンであるブルース・ウェイン

…の父親のトーマス・ウェインでした。

母親のペニーはウェイン邸で仕事をしていた経歴があり、

トーマスに生活の援助を求める手紙を何度も書いて送っていました。

しかし返事は一度も来ていません。

ペニーはトーマスは善良だから助けてくれると信じてやみませんでしたが

これにはアーサーもちょっとげんなり。

 

さあそんなある日、アーサーは仕事中に不良たちに襲われます。

店の看板を盗まれ、暴行を受けお金を奪われ、黙って帰宅します。

もう私は最初のこのシーンで胸が痛い。

そして後日、仕事仲間の一人に一丁の銃を渡されます。

自分の身を守れ、と渡された銃をアーサーはいけないことだと認識し

返そうとしましたがお礼はいつでもいいから、と続けて言われ、受け取ります。

おそらく初めて銃を持ったのか、家でも見つめたり触ったりして過ごします。

そして小児病棟での仕事の時も彼はそれを持って行っていました。

それを誤って落としてしまったがために彼は仕事をクビに。

小道具だと言い訳をしようとしましたが

同僚の告げ口でそれも叶わず、途方にくれます。

その帰りの地下鉄で、彼は最初の罪を犯します。

人の少ない地下鉄、アーサーの車両には3人の若者と1人の女性だけ。

そんな3人が女性に絡んでいるときに彼の「笑い」の発作が起こります。

3人は女性が車両を変えたので1人で笑っているアーサーに矛先を向けます。

アーサーが病気だと説明しようとすると襲われ、

一度はやり返したものの暴行は止まらず、

彼は銃を手に取りました。

2人を一発で仕留め、逃げた1人に残りの弾丸全てを浴びせたところでハッとします。

逃げ込んだ先で少し落ち着いたところでCMにも起用されている

彼のインスピレーションの降りてきているようなシーンが見れます。

本当に何かが降りてきている印象を受けました。

大変美しく描かれているシーンです。

そして、その後のアーサーの人生は好転します。

コメディアンとしての第一歩であるコンサートを成功し、

近所の女性といい雰囲気になり、

(ちなみにアーサーはこの女性とはエレベーターで偶然出くわし、

銃で自分の頭を撃ち抜くジェスチャーをされ、

自分のアレンジをした同動作をして彼女を笑顔にしました。

この時にアーサーの中で銃で死ぬことは面白いことだ

という認識が作られたのかもしれません)

そして殺人ピエロは社会現象となりました。

アーサーは己が生きているのかもわからなかった人間です。

彼にとって認知されるということがどれだけ嬉しいことか。

そしてこの頃衝撃的なことがわかります。

疲れて帰った日、母親のペニーがまた手紙書いておいており、

それを見るとトーマス・ウェインはアーサーの父親だと書かれていたのです!

アーサーは怒り、ペニーに詰め寄ります。

ここでのアーサーの怒りっぷりにはペニーも「殺す気!?」と叫んでいました。

それほど激しい感情を持っているアーサーをここでも見ることができます。

この後、すぐにアーサーはウェイン邸を訪れ、ブルースに接触します。

私としては彼はブルースを恨んでいるのではないかと思いましたが

彼はブルースにマジックを披露した後、愛おしそうに自己紹介をします。

思えば彼はこの時トーマスに受け入れてもらえると思っていたから

ブルースを本当の弟のように考えれたのでしょう。

しかしこの日はトーマスには会えずに帰宅します。

そして後日、劇場にてトーマスに接触します。

しかしトーマスはペニーをいかれ女だと称し、

アーサーは我が子でないと言い放ちます。

共に生活していた母と今日会った身分の違う父なら

アーサーはもちろん前者を深く信じていたのでしょう。

ここで彼は食い下がり、

僕が欲しいのは優しい言葉とハグだ!と主張しました。

しかし結果的にアーサーは拒絶され帰宅します。

帰宅するとアパートの前に救急車が停まっており、

ペニーが運び出されます。

そしてその場に居たのが事情聴取にきた警察官でした。

その後、病院の外で警察と話した後、

1人の警察官がアーサーの障害について

「笑うのはピエロとしてのキャラ付け?」

「笑うのも仕事だろ?」

と言い放ちます。

これにはアーサーもイラっとした様子でした。

実際笑いたくて笑ってるわけじゃないのにそんな言われようしたら腹も立つでしょう。

小学校の道徳ですね。相手の気持ちを考えましょう。って。

そして病室で看病しているとき、マレーが彼のコンサートの様子ををTVで流しました!

 

一瞬喜んだものの、番組の内容はアーサーをばかにするような内容で、

マレーはその放送でアーサーを「ジョーカー」と呼びました。

またこの頃アーサーはトーマスの言ったことの真偽を知るため

アーカムの病院を訪れ、ペニーの病気について知ります。

事実にショックを受けた彼は愛する恋人の顔を見に行きます。

しかし彼女は彼に対し

部屋を間違っている、お母さんを呼ぼうか?などと声をかけます。

これはつまり母親が倒れたことを知らない

そして彼を部屋に招くような間柄じゃない

ということで彼女との関係は全て彼の妄想であったと取れます。

当然アーサーもそれに気づいたようでした。

この後アーサーは堂々とした面持ちで歩いて自分の部屋へ戻ります。

イカれていると言われた母と同じ病を持っている自分に

吹っ切れたのだ、と私は思いました。

アーサーはこの後ペニーを殺します。

殺し方が枕で息が出来ないように押さえつけたのですが、

私にはこれが今まで病気だと押さえ込んで

息苦しい思いをさせられたアーサーの仕返しに見えて仕方ありませんでした。

 

その後、マレーのテレビ番組にゲストとしてオファーを受けます。

私は彼はこの時すでにマレーを殺すつもりだったのではないかと考えています。

己を嘲笑った者を本人の番組で殺してみせるのは

コメディアンである彼には魅力的だったのではないでしょうか。

番組の収録の日、彼に銃を売った同僚(男、とこれから表記します)

と背の小さな同僚が訪ねてきます。

この時、アーサーは男をハサミで殺します。

このハサミはベルがなった時にポッケに忍ばせたもの。

つまり彼は男が訪ねてくるのを予知していたと考えられます。

(全て妄想だったのなら納得です)

これは余談なのですが、別作品のジョーカーには

銃を使わないと公言していたパターンもあり、

その理由が銃を使うと苦しむ顔が見れないから、

ナイフなどでじっくり殺すのだと言っていた記憶が…

今作でアーサーが銃以外のもので人を殺すのは母親とこの男だけ 

母親には虐待の件や介護、彼女の妄想での弊害など

深い恨みもあったでしょうし

(場所が病院だったので静かに、というのが大きいでしょうが) 

男に銃を渡されたせいで彼は仕事をクビになり、

彼が弁解しようとしても告げ口されていて聞いてもらえなかった

という恨みもあります。

男を殺した後は背の小さな同僚を逃がしてあげ、

(この同僚のことを在職時アーサーは少し嘲笑っているような描写がありました)

自分は警察に追われながらも意気揚々とスタジオに向かいます。

この頃にはもうすっかり犯罪界の道化王子、ジョーカーです。

 

結論としてアーサーはマレーを殺すのに成功します。

この時アーサーは以前己が大切にしてきたものを全て捨てれています。

アーサーは真面目でコメディアンとしての学習も怠りませんでした。

人と自分の笑いのツボが違うことも理解し、それを受け入れようとしていましたが

この頃にはもう 幸せとは主観だ と己を持っています。

社会性ではなく自分のハッピーを優先させています。

介護してきた母親、憧れのマレー、笑いあった職場の同僚を殺し

今あるのは認められたいという感情と実力行使。

そしてピエロを信じるゴッサムの市民たち。

アーサーのしたことは悪である反面で

ゴッサム市民たちの希望でありました。

アーサーがマレー殺害による現行犯で逮捕され

連行されているときに彼は燃えるゴッサムを見て美しいと言います。

そのアーサーの顔の美しさといったらもう…

そしてアーサーはゴッサム市民により助け出され

多くの民衆の前で立ち上がり、多くの視線と賞賛を得ます。

自分の血でスマイルを作るアーサーの美しさ…

後半になるのにつれてアーサーを美しいと思うポイントが多くなります。

前半では痩せこけた少し汚いようなイメージの男性でしたが

後半には心なしか肌にハリが出ているような、演技の力でしょうか?

またこの終盤のシーンには一方その頃、という形で

ブルースの両親が殺害されているシーンが描かれています。

 

他作品ではジョーカーがバットマンを求めているようなシーンは多くあります。

この映画JOKERでもアーカムの病院に拘束されているアーサーは

バットマンのような自分を恨み、追いかけ、執着する、

そして自分も張り合える相手を求めていたのかもしれません。

それを己が恨んだトーマス・ウェインという男の息子、

ブルース・ウェインを脳内に生み出すことによって、

自分が原因で起きた暴動により両親を殺されたブルースを生み出すことによって、

彼は自分の望みを叶えたのではないでしょうか。

きっとこのアーサーの脳内ではこの後もストーリーは続き

やがてブルースはバットマンとなりジョーカーを追うのでしょう。

 

考えれば考えるほど絡みとられてしまうような映画JOKER。

これにて考察と、オタクによる妄想を終えさせていただきます。

至らないところも多かったかとは思いますが

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

思えば

 

この映画JOKERの妄想の持ち主であるアーサーの容姿をした男の名は

本当にアーサーなのでしょうか?

もしかしたらこの男性が妄想の中で名付けた名前なのではないでしょうか?

考えだすとキリがないですね。