善と鱗

のんびり静かに暮らそう

【ネタバレ】ゆれる人魚【考察】

約一ヶ月ぶりです。閲覧くださっている皆さん、お元気でしょうか?

現在、私は元気なのですが、自粛中でお仕事をせずにもう二週間近く経ちました。

技術職のアルバイトのため、かなり心配です。

また、貰えるはずだったお給料にも当然届かないので当分は倹約です、はは。

 

この長いお休み中に何をしていたか、と言う話ですが、

皆さんは何をされてましたか?

私は代わり映えせず本を読んだり、書いたり、部屋の片付けだとか、

あとはそう、映画鑑賞ですね。

あとは寝てます。

そして購買意欲を解消したいものの、外へは出れないのでネットショッピングも。

 

 

さてあとは映画のことも少し触れたいですね。

皆さん映画はどのジャンルがお好きですか?

ラブロマンス?アクション?サクセスストーリー?

私はホラー系が好きです。

でもお化けは滅法ダメで、ホラーが見たい友達と一緒に映画を探すと

だいたい怒られます。

私が好きなのはミュージカルホラーとゾンビ系です。

ITや十三日の金曜日とかも好きですね。

ITは考察が楽しいです、特にIT2

リッチーの心の奥にしまわれた感情に、もう揺さぶられました。

 

まあ、それは置いておいて。

私は映画をあまり見ずに生きてきており、最近になってよく見るようになりました。

なので有名どころでも見ていないものが非常に多いです。

ぜひオススメがあれば教えてください。

 

この休み中に見たものは面白いものが多かったですが。

特に好きだったのはゆれる人魚ですね。

ゆれる人魚は見たことあるって方、

また見たいなあと思っている方も多いかと思います。

(今、アマゾンプライムでみれますよ!!)

 

私は結局三回見て、考えたのですが、難しくってなかなか……

しかしミュージカルホラーのいいところは雰囲気、歌、表情、あとは考察、だと思っています。

ネタバレになるので嫌な方はここから先、目をつぶって欲しいのですが、

 

ゆれる人魚は、一般的な人魚姫が一筋になっています。

人魚が人間に恋をする→人間になる→しかし人間は別の人と結婚→人魚は海の泡に

が一般的、かつ有名な話ですよね。

この要素がしっかり入っています。

 

もう一つ、ゆれる人魚の人魚は肉食です。

パイレーツオブカリビアンの人魚に近いことをしています。

美しい歌声で惑わし、人間を食べています。

 

そしておそらく、この歌声には催眠作用

また人間をコントロールする作用があるように考えられます。

この物語は大前提として、人魚であることを隠さずに、二人の人魚は地上へ上がります。

二人の人魚は、大雑把に表すと、

姉 シルバー   幼い(人懐っこい)

妹 ゴールデン  大人っぽい(化物らしい)

こんな感じ。

たった二人で舞台ポーランドからアメリカを目指しています。

 

最初、この二人は三人組のバンドに歌を聴かせ、

二人をバンドマン達が働く、ポーランドのナイトクラブに運ばせます。

そこで二人は何の迷いもなく、人間の姿から人魚の姿になるのを人々に見せるのです。

ここで、まず、人魚が現れたら、町中、いや国中が大混乱になるはずです。

ましてやなぜクラブの人たち、オーナーや従業員、観客はそれを当然のように、賛美し、受け入れたのか。

まず、全員が、人魚達の魚の姿を見るより前に彼女達の歌を聴いています

私はここで催眠のようなものを人間達にかけたのではないか、と考えました。

この二人の人魚はこのクラブでの人気者になります。

 

姉、シルバーは自然に、人間、バンドマンの一人、ミーテクに恋に落ちました。

そしてミーテクもシルバーを愛していました。

二人は抱き合い、キスをする仲でしたが、

人魚であるシルバーの人間の姿の時には繋がるための穴がないのです。

だからシルバーは人魚の姿へ戻り、ミーテクに迫ります。

しかしミーテクは「僕には君は魚なんだ、したくてもできない」と断ります。

ここでシルバーは鱗を一枚剥がし、これでベースを弾いて、とミーテクに渡します。

この時、渡す前に、キスを、と言うと、ミーテクは控えめに、頬にキスをしました

そしてシルバーはまた歌を歌い、ミーテクと深くキスをします。

 

妹、ゴールデンは、姉、シルバーが心配です。

人間は食べ物、シルバーは人魚としての本能を忘れてはいないか。

また、人懐っこいシルバーはバンド仲間から愛され、ゴールデンは少しのけもの。

面白くない。孤独なゴールデン。

彼女は海の映像を睨みつけるように歌います。

その歌の世界では、ゴールデンただ一人。

しかし、人魚は超音波のようなもので話ができる、

シルバーはゴールデンただ一人の世界で少し動きます。

シルバーはそんなゴールデンの気持ちに少し気づいている、とも取れました。

 

しかしシルバーはミーテクを愛することをやめられません。

恋とはそう言うものなのでしょうか。

シルバーは大人に近づいていく思春期の女の子を体現した子です。

タバコ、酒、性行為、そう言ったものにどんどんと触れていきます。

 

また、二人の人魚の服を買いに行くシーンでは、

ゴールデンは靴を差し出されてもそれを捨てますが、

シルバーはそれを嬉しそうに履きます。

この時点で二人の運命は別たれていたんですね……

 

さあ、二人の運命はどんどんと進みます。

ゴールデンは人魚としての本能に従い、人間を操り、食べるようになります

シルバーはその間もミーテクと愛を深めています。

私はこの、ミーテクのキスしかできない関係での

シルバーの可愛がり方に愛を感じていました

できない、しない、そんな関係なのに、

彼は彼女を抱きしめ、キスをして、愛情を注いでいました。

まさに、純愛。人魚姫です。

シルバーはそんなミーテクに更に心を奪われ、手術で人間になろうとします

 

さて、この人魚の姉妹は次に怪しい男性、トリトンに出会います。

シルバーは初めて彼を見た時に、

「悪魔が現れた」

といい、去ります。

ゴールデンはその反対にトリトンに近づき、良好な関係を築きます。

 

トリトンとはギリシャ神話に登場する海神ですね。

よくあるのが人間の上半身と魚の尾を持つ姿で描かれます

一目で姉妹が彼を人外だと認識したことから、三人は水中で出会ったことがあるのかもしれません。

ゴールデンは人間は食べ物だと認識しているため、トリトンには懐き、

シルバーは自分が人間に恋をし、その人間に魚とはできない、と言われ、人間になろうとしているところから、トリトンに懐かなかったのかもしれません。

思春期の女の子、と言う観点から見ると、

シルバーはこの年上の男性人魚に反抗しているのですね。

人間に恋をするのは愚かだと、言われるとわかっているから。

ここでゴールデンはトリトンに、姉の末路について聞かされます。

それはミーテクがもし、別の女と結婚すれば、

その夜明けにシルバーは海の泡になってしまうと言うもの。

 

ゴールデンは心配です。

姉が泡になってしまう、人間の男のせいで。

 

ある晩、ゴールデンは人間の女性警官に殺人について問われます。

以前食べた男のことです。

ゴールデンはとぼけますが、女性は逃がしてくれそうにありません。

そこでゴールデンは歌います。

女性はあっという間に操られ、ゴールデンと関係を持ち、おそらく、殺されてしまいます。

ここでおそらく、と言うのはその寸前までの描写はあるが、

確実に仕留めたと言う描写がないからです。

ただ、その後は出てこないことからも、亡くなっているものと思われます。

ゴールデンの魔力は女性にも有効だ、と言う明確な描写です。

これにより、この物語に出てくる人全てが人魚の魔力に狂わされている、と考えることが可能になります。

 

しかしある日、バンドマン三人組と姉妹がテレビを見ていると、

ゴールデンが殺した男が殺人事件だと報道されました。

この報道にゴールデンがやったのでは、と勘付くバンドマン達。

シルバーもこれにはびっくりです。

アメリカに渡る前にここで生活すると言ったのはゴールデンだったのに

彼女はわざわざこの街で生きにくいような真似をして見せた。

ゴールデンの孤独を感じ取っていたシルバーからすれば当てつけのようにも思えます。

シルバーがここまで人間を食わずに過ごしていることから、我慢できる衝動のはずです。

ここでゴールデンは席を外し、シルバーは三人のバンドマンのうち、

ミーテクを除いた中年の男女に問います。

「なぜ遊んでくれないの、スケートにも連れて行ってくれない」

「毎晩ステージに立っているのにお金ももらえない」

正直、急に何を言い出すんだ、今それ関係なくないか、と思ったのですが、

問われた女性、クリシャは

「なんでも子どもの言う通りにはならないものよ」

といい、そこでシルバーはゴールデンを追いかけます。

子供として遊ばずに大人のように働いている、

しかし権利を主張すればその両方が大人の都合のいいように却下される。

まさに思春期の悩みそのもの

母親や教師に言われたことそのままのように思えます。

 

このシーンは上記に述べたことを感じさせたいのではないか、と思うのですが、

何がこの言動に至らせたのか、と言う点では、

シルバーによる、ゴールデンの擁護、くらいしか思い浮かびませんでした。

孤独を感じるゴールデンの稚拙な行動、それは彼女の周りみんなを危険に晒します

しかしその行動の原因はゴールデンだけにあるわけではなく、

こちらの要望を全く飲まないあなた達にもあるんだぞ

と言う言い分なのではないでしょうか。

責任転嫁といえばそうかもしれませんが、私自身、思春期の時に覚えがありました。

 

さて、人魚の姉妹はこの一件でバンドマン達に捨てられてしまいます。

文字通り、気絶させられ、川へ落として捨てられるのです。

しかし水はお手の物。二人は舞い戻ります。

その道中に二人組の男性(おそらくゲイカップルかと)を姉妹は食べます。

これはセクシャルにも関係なく、人魚の魔力は有効だと言う風にとれます。

またこの食事の際、ゴールデンは笑いながら食事をしますが、

シルバーは口に含んだ肉を吐き出し、無表情です。

人魚としての本能を本気で捨てにかかっていることが伺えます。

 

二人がクラブに帰ると、シルバーは真っ先にミーテクに抱きつきます

そして中年の男の前にゴールデンは立ち、男は謝罪します。

そしてその謝罪に「怒ってないわ」と返しながらも、

ゴールデンは男の親指を食いちぎります

これには暗に、あの事件の犯人は私だ、と言うニュアンスと、

次に逆らうとお前もああなるぞ、と言う脅しを感じました。

ゴールデンは化物としての本性を隠しません。

 

さて、返り咲いたのはいいものの、トリトン曰く、

シルバーが人間になる手術をすると彼女はその声を失うと言うではありませんか。

声は人魚にとってかけがえのない武器です

人間を操り、食べるためには必要不可欠。

またこの二人の仕事にも、なくてはならないものです。

そこで姉を止めようとゴールデンは説得しますが、シルバーは聞く耳を持たず、

人間になる手術を受けます。

この時、ミーテクは一緒に手術に付いてきてくれます。優しい男です。

 

シルバーは無事、人間の体を手に入れました。

下半身を切り落とし、人間の下半身を手に入れると言うファンタジーな内容ですが、

無事成功。声はやはり失ってしまいます。

 

しかしミーテクは彼女の大きな傷跡にも顔をしかめずついにベッドシーン

シルバー念願の……大人の階段です……

しかし、ミーテクは違和感を覚えます

血が、彼の下腹部にべったりとついていました。

しかしシルバーのお腹の傷からは血は出ていません

そのことから、これは月経

別の大人の階段も登っていたようです。

シルバー、経血なんて見たことないでしょうから状況が飲み込めません。

しかしこの時のミーテクの顔……

この後、ミーテクは綺麗な女性とすぐに恋仲となり、シルバーを捨てます。

 

シルバーの魅力は幼さ、大人の女性と少女の間と言う不安定さ。

月経は大人になった証、ミーテクはこれに心が冷めてしまったのではないでしょうか。

まあ、少しひどい気もしますが、ミーテク……

 

ラストです、ミーテクはその女性との結婚式を開きます。

船の上で歌うミーテクと女性。

シルバーは笑顔でそれを見つめます。

しかし、その表情は泣きそうにも見える。

トリトンとゴールデンは言います。

彼を食べなさい。

でないと夜明けにシルバーは海の泡になってしまう。

 

しかし、彼女は人魚姫の物語通り、彼を食べることはできませんでした。

ミーテクを食べるため、近づき、そして、抱きつき、首元に歯を立てようとし、

しかし、ミーテクの優しい抱擁に、ミーテクへの恋心に、シルバーは躊躇する。

ゴールデンは近くまで見に来て、シルバーを後押しする。

しかし、シルバーはしっかりとゴールデンを見据えながらも、

ミーテクを選んでしまった。

 

私は思います、シルバーはミーテクに魔法をかけていたのではないでしょうか

彼女はミーテクに最初に性行を断られた時に歌い、その後キスをされています。

その後もシルバーはステージに立ち、歌を歌っていた。

しかし彼女は手術で声を失ってしまう。

ミーテクにかけられた魔法は少しずつ解け、初めてのベッドシーンの時に解けた

それでも、結婚式の日、彼に優しく抱きしめてもらえた。

これは魔法じゃない、ミーテク自身の本当の優しさ

シルバーはそれに満足し、ミーテクの確かな幸せを願い、

自ら泡になったのではないでしょうか。

シルバーにとっては、満足のいく結果だったのかもしれません。

ミーテクが幸せになってくれるなら

 

しかし、これで終わらないのがゆれる人魚

怒りに狂ったのは妹、ゴールデンです。

姉はしっかりと自分を見つめていたのに、

目の前の男、ミーテクを選んだのです。

この男よりずっと長い間一緒にいた自分より、

そんな自分とのこれからの未来より、

この男の幸せと未来を望んだ

ゴールデンの完全敗北

ここで、ゴールデンはミーテクに襲いかかり、彼の喉笛を噛み切り、

水中へと姿をくらませます。

これによって、シルバーの願いは届かず、ミーテクや女性の幸せな未来は途絶え、

ゴールデンはただ一人、また水中で獲物を狙い生き続けるのです。

 

誰も幸せにならないエンド。

しかし怪しく美しい物語に心を奪われる方も多いのも事実。

 

至らない点も多かったかと思いますが、以上が私の考察です。

今回の考察があなたの考察を深めることができることを望みます。

ここまで閲覧いただき、ありがとうございました。